星と君と



「ね。星を見に行こうよ」

「えっ? 今から?」

「そ。今から」
 満面の笑みで君が言った

 僕は仕事帰り
 いつものように君の部屋へ寄って
 やっと一息ついたところだった

「かなわないなぁ」
ボソリとつぶやいたけれど、君はお構いなしで

「明日休みでしょ? 今日は月明かりもないし最高よ」

 そう言うと、君はキッチンへ行き
 手際よく、パンにチーズとハム、レタスを挟んでバスケットに詰め
ポットに入れるコーヒーをドリップしている

「コーヒー今飲みたいよ」と僕が言うと
仕方ないわねぇという感じで小振りのカップに注いでくれた
 
それから君は忙しくブランケットやらランタンやら集めている
 僕はそれを眺めながらコーヒーを飲んでいた

 
「よし出来た。さぁ行きましょう」と君はにっこり微笑む
 やれやれ
  こういう時の行動力はすごいな


 車の後部座席にブランケットなどを置き
 君はバスケットを大事そうに膝の上にのせて
 「夜のピクニックね」と楽しそうだ
 

 街に住んでるとはいえ、車で1時間も走れば山の麓まで着く
 峠を登り、開けている所にある小さな展望台に車を止めた 
 
 車を降りて空を仰ぐと、一面の星、星、星

 丁度良くベンチがあったので
 僕らはそこに腰を下ろし星を眺めた

夜空を眺めるのなんて久しぶりだなぁ」
「今は秋の星座ね。あれがペガススかな」

 君が指で星を辿る先に四辺形に並ぶ星

「星に詳しかったっけ?」
「小さい頃好きだったのよ」

 まだ僕が知らないことがあるんだな


 燈もない静寂の中
 僕らは降ってくるような星を眺めていた
 

 どのくらい時間が経ったのだろう
「食べましょうか」と
君はこれまた手際よくランタンを付けて
 バスケットを開き、ポットのコーヒーをカップに注いだ
 
 かなり躰が冷えていたのを
 温かいカップが気づかせてくれた
 
「たまにはいいでしょう? 星を眺めるのも」
 ふいに君が言う

落ち込んでいても心が落ち着くのよね」
 そう言うと、君は目を伏せカップのコーヒーを見つめた


 今日、僕は仕事でミスをしてかなり落ち込んでいた。
 君の前では普通にしていたつもりだったのだけど・・・
 確かに星を眺めていたら、落ち込んでいた事を忘れていた

「よく僕が落ち込んでいるのがわかったね」

「…
長い付き合いだもの」と
君はやさしく笑ってそう言った 
 
「…
ありがとう」
  僕はカップに視線を落としコーヒーを飲み干した
 君の気遣いがすごく嬉しかった


 ブランケットにくるまりながら二人並んで星を見て
 こんな優しい時間があるんだなと
じんわりと心が温かくなった



 睡魔が訪れる前に車に乗り、帰路につくと
 すでに睡魔は君に降りてきて
 こくりこくりと船を漕ぐ君の寝顔を横目に
 先ほどの言葉を思い出す

 ―長い付き合いだもの―

本当、かなわないなぁ」
ポツリとつぶやき苦笑する

 僕は(そろそろ指輪を用意しないとな)と思いながら
 君が隣にいる幸せを噛みしめていた







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